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せきようかんじけんのしんそう
赤耀館事件の真相
海野 十三
「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页
警部が帰ると入れちがいに嫂が入って来ましたが、思いがけなくこの事件のことを聞いたものと見えて、真蒼な顔をしていました。
「あなた、笛吹川さんが此処へいらしって、頓死なすったんですって? 本当ですか」
「嘘にも本当にも、先生あすこに眠っているよ」と隣室の寝台を指しました。
「眠っている! 死んだのではないのですか」
「いや死んだのです。心臓麻痺だとサ」
「心臓麻痺だと言いましたか。笛吹川さんは何時此処へいらしって」
「三時過ぎだったよ、どうして」
「ハア――なんでもないのよ」
笛吹川画伯頓死事件は、こうして片付きました。夜に入ると匆々、画伯の屍体は、寝台車に移し、赤耀館からは四里も先にある、隅田村の画伯の辺居へ送りとどけることにしました。ついて行ったのは、執事の勝見と、手伝いの伴造との二人だけでした。執事は笛吹川画伯の世話で、赤耀館に勤めるようになった関係上、それからまた、画伯に縁者のないため死後の後始末をして来るため、このところ数日の暇を貰って行ったのです。
赤耀館では其夜も更けて一時とも覚しき頃、今夜は帰って来ないと思われた手伝いの伴造がひょっくり裏門から入って来ました。