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せきようかんじけんのしんそう
赤耀館事件の真相
海野 十三
「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页
じゃ帰ることにしようと、尻を持上げましたがナ、今度は勝見さんが近所の人に、引取って呉れ引取って呉れと言ってましたよ。勝見さんは、あんな淋しい処で、死人と一緒に居て怖がらないんですぜ、わしなら、真平御免でがす」
伴造から勇気を推奨せられた執事の勝見は五日経って、十五日に邸へかえって来ました。すこしやつれた様子だったが、元気はよかったのです。いつもよりハキハキと用事を勤めているように見えましたが、兄の眼には、勝見の態度が、反って変に白々しく映ったのでした。自分が短刀を持っていたのを殺意ありと解した勝見は、それ以来、自分を敬遠しているのに違いあるまいと思われたのです。勿論勝見は其の夜のことを再び口にしなかったし、兄も言い出しはしなかった。兄は勝見に暇を出したくはあったが、例のことを喋られるのを恐れて、絶対に馘首が出来ない。それでますます、勝見が悩しき存在となって来たのでありました。
ところが、兄は更に勝見に対するこだわりを深くしなければならないことになったのです。いや、そればかりではなく、彼の恋女房である綾子をさえ、真面に見ることができなくなったのです。