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せきようかんじけんのしんそう

赤耀館事件の真相

海野 十三

「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页

青空文庫

そしてあんたは、何処がお悪いの?」

「一寸申上げ兼ねる健康状態でございます。いずれ其の内には判ってしまいましょうが、私の口から申し上げることはお許し下さい」

「百合子ちゃん。仕方がないのよ、帰しておやりなさい」嫂は沈黙を破って突然こんなことを言いました。

「そーお」百合子が不平らしく黙ってしまうと、勝見はしずかに頭を下げ、別れの挨拶をして出て行きました。

「赤耀館の悪魔は出て行った。ホホホホ」嫂がヒステリカルに高い声をあげて笑いました。

「でも魅力のある悪魔なんでしょう。姉さん、あたし、なにもかも知っててよ」

「出て行ったんだから、何も言うことはないでしょう。百合ちゃん。あの人は悪魔でも、あれからこっち外に相談する男のひともないんですもの」

「姉さんは、水臭いひと」なにか外のことを考えているらしく、百合子が言いました。

勝見が此の家を去ってからのち、嫂は果してすこしずつ、不健康になって行ったようです。ときには、ひどい発作を起して、流石の百合子も介抱に困じ果ててしまうことさえ稀ではありませんでした。そうしたときに、嫂の感情を和げる唯一つのものは、寄港地や船から打って寄こす、簡単な私の電文であったそうです。