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せきようかんじけんのしんそう
赤耀館事件の真相
海野 十三
「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页
この上は、もはや、印度洋あたりを航海している筈の私の帰朝の一日も早いことを祈らずにはいられなかったのです。しかし彼女は始めて私に会うわけなのですから、私という男がどんな人間であるかも判りかね、幾分の不安を伴うのでありました。
尾形警部は勝見の引致が大変手間どれるのに苛々していました。警部は、勝見を兄夫妻殺しの犯人と睨んでいたのでした。ホテルで嫂と一夜を明かしたものは、勝見であるに違いはないのです。勝見を訊問することにより笛吹川画伯の頓死に溯り、赤耀館事件の一切が明白になると考えて、夜の目も睡られぬほどに興奮していました。
ところが予定よりも数日おくれて、勝見を迎えにやった腕ききの刑事が、狐につままれたような顔をして尾形警部の前にぼんやり立ちました。
「どうしたんだ、勝見はどうしたんだ?」尾形警部は気の短かそうな声を張りあげたのでした。
「どうもおかしなことになりました。私は早速、彼奴の郷里である岡山県のS村に行きましたが、彼奴の居所がさっぱりわからないのです。村の人達にきいてやっと知れたことは、勝見は病気のため村を去ったそうです」
「病気? そしてどこへ行ったのか?」