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せきようかんじけんのしんそう
赤耀館事件の真相
海野 十三
「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页
世の中にこれほど惨酷な他殺方法を考え出した男が他にありましょうか。――残念なことに、今以て彼の行方が知れないのです。しかし私は草を起し、土をわけてもあの殺人鬼を探し出して見せますよ」こういって赤星探偵は口をむすびました。
「すると笛吹川は、まだ此の赤耀館の者に呪いの手をのばすかも知れませんわね。まああたくし、どうしたらいいのでございましょう」百合子は、次の犠牲者となることを考えてみて早や眼の前が暗くなったようです。
「御心配は無用です」と赤星探偵はやさしく言いましたが、何を考えたものか、彼は黒い眼鏡を外し、長髪に手をかけて引張ると、それはするりと彼の手の中に丸めこまれました。そこには晴々しい笑顔をうかべた二十七八歳と思われる青年の顔がありました。それはどこやら覚えのある顔でした。ああ、丈太郎の弟である亮二郎さんに違いはなかったのでした。
「まあ、貴方は……」百合子はさっと顔をあからめました。「赤星探偵、実は松木亮二郎です。よく私を覚えていてくれましたね。貴女にも色々御心配をかけましたが、今日からは私が貴女の保護者になりましょう。やさしい貴女が私の側についていて下さる間は、赤耀館にはなんの惨劇も起り得ないのです」