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えっちゅうつるぎだけ

越中劒岳

木暮 理太郎

「武侠世界」1922(大正11)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,680 字 · 10 页

青空文庫

劒の登山路の中で、兎も角も荷物を持って登れる路はこの外には無いのである。此尾根から初めて劒岳に登った人は冠松次郎君で大正六年の七月であった。

南口は別山に続く尾根を辿るものであって、鶴ヶ御前を北に下ると草原を水がだぶだぶ流れている好い野営地がある。夫から草山を一つ越すと劒の南に続く峰の登りに懸って、岩と偃松の間を押し分け乗り越えて進んで行くと、平蔵谷の上部を取り巻く岩壁の上に出る。此附近が最も悪場であるから、注意を怠ると危い目に遭わぬとも限らぬ。其処を過ぎればさしたることなく頂上に達せられる。鶴ヶ御前から二時間半の行程である。室堂を午前五時頃に出発すれば日帰りの出来る道程である。此路は大正二年七月に近藤茂吉君が下山の際初めて通過し、同年八月に私は南日、中村の二君と逆に之を登った。今では此路を通るものが相当にあるようである。

東口は三窓の雪渓を登るのが、既に一仕事である上に、更に三窓の頭まで登って尾根を縦走しなければならないので、此路を取る人は殆ど無いと称してよい程である。尾根伝いの間は左程危険な場所もないが、相当に骨は折れる。三窓の雪渓は劒岳に懸るものの中で最も長く且つ急でもあるから、登りに二時間を要する。