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おどるいっすんぼうし

踊る一寸法師

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,734 字 · 16 页

青空文庫

お花の悲鳴は、さも瀕死の怪我人の様なうめき声に変って行った。最早文句をなさぬヒーヒーという音であった。やがて、それも絶え入る様に消えて了うと、今迄動いていた箱がピッタリと静止した。

一寸法師はゼイゼイと肩で呼吸をしながら、その箱を見つめていた。彼の額は、水に漬った様に、汗でぬれていた。彼はいつまでもいつまでも、そうしたまま動かなかった。

見物達も妙に黙り込んだ。死んだ様な沈黙を破るものは、酒の為に烈しくなった、皆の息づかいばかりだった。

暫くすると、緑さんは、そろりそろりと、用意のダンビラを拾い上げた。それは青龍刀の様にギザギザのついた、幅の広い刀だった。彼はそれを、も一度床につき立てて、切れ味を示したのち、さて、錠前を脱して、箱の蓋を開けた。そして、その中へ件の青龍刀を突込むと、さも本当に人間の首を切る様な、ゴリゴリという音をさせた。

それから、切って了った見得で、ダンビラを投げ出すと、何物かを袖で隠して、かたえのテーブルの所まで行き、ドサッという音を立てて、それを卓上に置いた。

彼が袖をのけると、お花の青ざめた生首が現れた。切り口の所からは真赤な生々しい血潮が流れ出していた。