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おどるいっすんぼうし
踊る一寸法師
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1926(大正15)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,734 字 · 16 页
巧みな道化役者にも似合わない、豆蔵の緑さんは、十八の娘の様に、併し不気味な嬌羞を示して、そこの柱につかまったまま動こうともしない。
「止せったら、止せったら」
それを無理に紫繻子が引張るので、その度に、つかまっている柱が撓って、テント張りの小屋全体が、大風の様にゆれ、アセチリン瓦斯の釣ランプが、鞦韆の様に動いた。
私は何となく気味が悪かった。執拗に丸太の柱につかまっている一寸法師と、それを又依怙地に引きはなそうとしている紫繻子、その光景に一種不気味な前兆が感じられた。
「花ちゃん、豆蔵のことなぞどうだっていいから、サア、一つお歌いよ。ねえ。お囃しさん」
気がつくと、私のすぐ側で、八字髭をはやして、その癖妙ににやけた口を利く、手品使いの男が、しきりとお花に勧めていた。新米らしいお囃しのおばさんは、これもやっぱり酔っぱらっていて、猥褻に笑いながら、調子を合せた。
「お花さん、歌うといいわ。騒ぎましょうよ。今晩は一つ、思いきり騒ぎましょうよ」
「よし、俺が騒ぎ道具を持って来よう」
若い軽業師が、彼も肉襦袢一枚で、いきなり立上って、まだ争っている一寸法師と紫繻子の側を通り越して、丸太を組合せて作った二階の楽屋へ走って行った。