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おどるいっすんぼうし

踊る一寸法師

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,734 字 · 16 页

青空文庫

そして、故意か偶然か、彼女は一寸法師の顔の上へ尻餅をついて了った。

仰向きにおしつぶされた緑さんは、苦し相なうめき声を立てて、お花のお尻の下で藻がいた。酔っぱらったお花は、緑さんの頭の上で馬乗りの真似をした。三味線の調子に合せて、「ハイ、ハイ」とかけ声をしながら、平手でピシャピシャと緑さんの頬を叩いた。一同の口から馬鹿笑いが破裂した。けたたましい拍手が起った。だが、その時緑さんは、大きな肉塊の下じきになって、息も出来ず、半死半生の苦みをなめていたのだ。

暫くしてやっと許された一寸法師は、やっぱりニヤニヤと、愚な笑いを浮べて、半身を起した。そして、常談の様な調子で、

「ひでえなあ」

とつぶやいたばかりだった。

「オー、鞠投げをやろうじゃねえか」

突然、鉄棒の巧みな青年が立上って叫んだ。皆が「鞠投げ」の意味を熟知している様子だった。

「よかろう」

一人の軽業師が答えた。

「よせよ、よせよ、あんまり可哀相だよ」

八字髭の手品使いが、見兼ねた様に口を入れた。彼丈けは、綿ネルの背広を着て、赤いネクタイを結んでいた。

「サア、鞠投げだ、鞠投げだ」

手品使いの言葉なんか耳にもかけず、彼の青年は一寸法師の方へ近いて行った。