轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
おどるちへいせん
踊る地平線(下)
谷 譲次
谷譲次『踊る地平線(下)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 141,823 字 · 283 页
しかし、そうでなくても彼はしじゅう祭典をあげているらしかった。彼の鼻は隣りの食卓の酒まで嗅ぎ分けたし、手は秋の夕方の電線のようにふるえていた。フロウレンスの歯科医は自分に話しかけられた場合にだけは決して答えなかった。そして彼は誰のとも知れない一本の脱毛に興味の全部を集中していた。彼はそれを卓子の琺瑯板の上に押さえて、ペン・ナイフで端から細かく刻む仕事に没頭していた。彼はまたタキシイドの胸のポケットへ革命的な襟飾を押し込んで、それを素晴らしい変り色の絹ハンケチであるかのごとく見せる術にも成功していた。じっさい、もし一度彼がそのネクタイであることを忘れて、ぽけっとから引き出して口の周囲を拭きさえしなかったら、私たちはみんないつまでもそれをハンケチであると信じ込んでいたろう。
報知蜂紙の特派員は水蜜桃のような少年だった。彼は手の平に金いろの細毛を生やしていた。そして去年の暮れマドリッドの古い劇場が焼けたとき、そこに居あわせたと言ってしきりにその時のことを話した。
『火よりも煙りが恐ろしいのです。それはまるで古帽子から燻ぶる反動思想のように――。』
しかし彼の聴手はフランシス・スワン夫人だけだった。