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おどるちへいせん
踊る地平線(下)
谷 譲次
谷譲次『踊る地平線(下)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 141,823 字 · 283 页
当時かれは二十三歳だったからです。一体博奕場へ出入りするもののあいだには、数に関する妙な脅迫観念のようなものがあって、銘々がめいめいの「数」を大事に持って守っています。それは或る人にとっては生れた日であったり、または名前の綴りの字数であったり、その由って来たるところは千差万別ですが、みな自分の数字を限りなく神聖なものとして、それに絶対の信を置いていることは同じです。で、「23」もそういうわけで、いつも二十三へばかり賭けていたのでした。こうしてキャジノの内部で「23」が彼の代名詞にまで有名化した時です。
その晩かれは例によって「自分のルウレット台」で十法の最小限度を二十三に張り抜いていましたが、ふと気がつくと、何かしら異状に冷たい固いものがかれの大腿を横から押しているのです。何だろう?――「23」は下を覗きました。御存じの通りルウレット台の下には何の仕掛けもありません。が、彼はそこに無意識らしく迫っている隣の女の脚を発見したのです。
その女というのは、高級売春婦以外の何者にも踏めない、三十あまりの、それでも、見たところはたしかにパリジェンヌのようでした。