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みがわりのはなよめ

身代りの花嫁

野村 胡堂

「少女倶楽部」1934(昭和9)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,685 字 · 22 页

青空文庫

「悪戯っ子が窓ガラスを壊したのね。昼のうちに修繕させて下さい」

勇美子がそんな事を書生に言い付けて居るのまで聞えます。昨夜忍び込んだ曲者が、この様子を見て居るとしたら、どんなに仰天したことでしょう。

翌日の晩、

二人の曲者はまた庭の中に忍び込んで居りました。

「昨夜の手際はどうした。窓硝子は町の悪戯っ子が石投で割ったと思ってるからいいようなものの、そうでもなきゃア今晩は来られやしない。名誉の腕前も当てにならないぜ」

「それが不思議なんで、あれで心臓を撃ち貫かないとなると、防弾チョッキかな」

「若い女がそんなものを着るか」

「窓硝子に当って弾が外れたんだろうよ親分」

「そうかなア、何しろ、今晩はお前に任せちゃ置けない。見張を頼むぜ」

「親分がやんなさるのかい」

「当り前よ」

背の高い方の男は、建物の裏へ廻ると、窓枠に手をかけて、深い窓へソッと半身を覗かせました。今晩は居間の硝子越に撃つようなことをせずに、いきなり詩子の寝室を襲撃したのでしょう。大きい男はしきりに窓へ細工をして居りましたが、やがて盲扉を開けて、硝子扉を開けると、なんの躊躇もなく部屋の中へ飛込みます。