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ぐんようそ

軍用鼠

海野 十三

「新青年」博文館、1937(昭和12)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,659 字 · 37 页

青空文庫

(と書くと、この国境の税関には余り事件もなく、かなり平和な呑気な関所であることが読者に通じるだろうと、作者梅野十伍はそう思いながら、こう書いたのである)

「なあンだ、レッドか。また鼠の籠を持ちこもうてえんだろう。あんまり朝っぱらから来るなよ。鼠なんか夕方で沢山だ」

ワイトマンはいささか二日酔の体で、日頃赭い顔がさらに紅さを増して熟れすぎたトマトのようになっている。(この件は、作者梅野十伍に自信がなかった。彼は生れつきアルコールに合わない体質を持って居り、いまだ嘗て酒杯をつづけて三杯と傾けたことがない。だから二日酔がどんな気持のものだかよく知らず、また二日酔になった患者はどんな顔をしているか正確なる知識はなかった。ただ彼の親しい友人のAというのが、よくこんな赭い熟れきったような顔を彼の前に現わして、「ああ昨夜は近頃になく呑みすぎちゃった。きょうはフラフラで睡い睡い」と慨くのであった。梅野十伍は、そういうときの友人Aの容態が所謂二日酔というのだろうと独断した。だから白国官吏のワイトマンは迷惑にも作者の友人Aの酔態を真似しなければならなかった)

「旦那、そういわないで見ておくんなさい。