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ぐんようそ

軍用鼠

海野 十三

「新青年」博文館、1937(昭和12)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,659 字 · 37 页

青空文庫

レッドは籠を卓子の上から持ち上げた。

途端にワイトマンが叫んだ。

「オイ待て。――」

「なんですか、旦那」

「貴様は、もう許しておけんぞ。この卓子の上を見ろ」

ワイトマンが憤りの鼻息あらく指さしたところを見ると、彼の大事にしている丸卓子の上は、鼠の排泄した液体と固体とでビショビショになっていた。

レッドは鼠の籠をぶら下げたまま、頭を掻いた。そして腰にぶら下げてあった手拭を取って、卓子の上を綺麗に拭った。そしてワイトマンの宥恕を哀願したのだった。

「レッド。勘弁ならぬところだが、今日のところは大目に見てやる。一体こんな金網の籠に時を嫌わず排泄するような動物を入れて持ってくるのが間違いじゃ。この次から、卓子の上に置いても汚れないような完全容器に入れて来い。さもないと、もう今度は通さんぞ」

「へえい。――」

レッド老人は恐縮しきって、ワイトマンの前を下った。そして税関の横の小門から出ていった。そこはもう白国の街道であった。

街道を、レッド老人は大きなパイプからプカプカ煙をくゆらしながら歩いていった。そして思い出したように、鼠の籠の入口を開けて、ポケットに忍ばせて置いた員数外の鼠を中に入れてやったのである。