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ぐんようそ
軍用鼠
海野 十三
「新青年」博文館、1937(昭和12)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,659 字 · 37 页
しかし予定の紙数は既に尽きた。もう筆を停めなければならない。
では、右の疑問符の答だけを書きつけて置こう。多数の真珠は鼠の胃袋のなかに押しこんであったのである。
さあこれで一応結末がついたようであるが、まだ最も大事なことが一つ説明してなかった。それは本篇の表題であるところの「軍用鼠」のことである。
軍用鼠とは、軍用に鼠を使うことである。軍用犬にシェパードやエヤデルテリヤを使う話はよく知られている。軍用犬あって軍用鼠なからんや。
軍用犬に比して軍用鼠の利点は頗る多い。第一安価である。また繁殖力が大きい。非常に敏捷である。その上、甚だ携帯に便である。兵士の両ポケットに四匹や五匹入れて行ける。これを訓練して、一旦有事のときに使うときは、その偉力は実に素晴らしいものである。ただ一つ、鼠の欠点は鼻の頭が弱いことである。ここんところを箒でぶんなぐると、チュウといって直ちに伸びてしまう。だから軍用鼠の鼻の頭には鉄冑を着せておかなければならない。
実は老人レッドから盛んに鼠を買いあげるラチェットなる人物は、この軍用鼠の研究家であった。彼の住む寒い白国には鼠というものが棲息していなかった。