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かるいざわ

軽井沢

寺田 寅彦

「経済往来」1933年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,190 字 · 13 页

青空文庫

冬になればこのへんはほとんど無人境になるそうであるから。

そう言えば、すずめもいっこうに見かけない。御代田へんまで行くとたくさんいるそうである。このすずめの分布は五穀の分布でだいたいは説明ができそうである。人間は金のある所へ寄るが鳥獣の分布はやはり「すぐに取って食える食物」の分布できまるものらしい。

星野に小さな水力発電所がある。六十五キロだそうである。これくらいのかわいいのだといわゆる機械的バーバリズムの面影はなくて、周囲の自然となれ合って落ち着いている。狭い発電所の構内には、おいらん草が真紅に美しく咲き乱れている。発電所から流れ出す水流の静かさを見て子供らが不審がる。水はそのありたけの勢力を機械に搾取されて、すっかりくたびれ果てて、よろよろと出て来るのである。しかし水は労働争議などという言葉は夢にも知らない。

人間は自然を征服し自然を駆使していると思っている。しかし自然があばれだすと手がつけられないことを忘れがちである。全国至るところにある発電所の堰堤のどれかが、たとえば大地震のためにこわれたら、その時には人間の弱さがはっきりわかるであろう。