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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
動物をつかって耕作をする事のない此村には馬の数は非常に少ない。
往還で行き会う荷馬も、大方は、用事をすませれば、町方へ帰るものか、又は、村から村へと行きずりの馬である。
往還から垣もなく、見堺もなく並んで居る低い屋根は勿論「草ぶき」で性悪の烏がらちもなくついばんだり、長い月日の間にいつとはなし崩れたりした妙な処から茅がスベリ出して居て陰気に重い梁の上に乗って居る。外囲いは都会の様に気は用いない、茶黄色い荒壁のままで落ちた処へ乾草のまるめたのを「つめ込んで」なんかある。
こんな家に二階建のはまれで皆平屋である。家の前には広場の様な処が有って、野生の草花が咲いたり、家禽などが群れて居る。
この村人の育うものは、鳥では一番に鶏、次が七面鳥、家鴨などはまれに見るもので、一軒の家に二三匹ずつ居る大小の猫は、此等の家禽を追いまわし、自分自身は犬と云う大敵を持って居るのである。
人通りのない往還の中央に五六人きたない子がかたまって、尾をあげ爪を磨いでうなる猫と、腹立たしそうにクワンクワンと叫ぶ犬を取り巻いて居る事がよくある。向いの家の猫が自家の鶏を取った事から、気づくなった家なんかも有った。