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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
こんな人達の勢力は、実に「井の中の蛙」と云うのに適当なものである。
中学校がこんな村にある! 一寸妙な気のする事だけれ共、それは県庁が、比較的景色の好い精神的と肉体的とを兼ねたこの健康地を選らんだと云うばかりだけれ共、その生徒の中から此村に落される金ばかりは割合に労働なくて得られる金の唯一なものであった。遠い村に家のある生徒は、半農民の小ざっぱりした家へ下宿し、そのために二軒の下宿屋さえ有るのである。夏季講習が折々この村の中学で行われる時は、村中が急に、さざめき渡るのである。
それだから、彼等にとって生徒はまことに有難いものに写るので「生徒さん」と云う名をつけて必して呼びずてにする事はしなかった。
源平団子と云う菓子屋はいつもこの「生徒さん」達ににぎわされ、その少しさきにある、料理屋兼旅人宿は、花見時、競馬時でなければたちよる人の影もまれである。
斯んな村にも、厳な大神宮がある。檜と杉の森を背に、三番池を見下して居る。村に置くには勿体もないほどであるけれ共、主だった事々が行われるにはいつも、県庁の役人が出向くのが常である。
とうに別格官幣大社になるはずではあるけれ共、資産のとぼしいばかりに今も尚、幾十年かたここに建てられたと同じ位に居なければならないのであった。