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のうそん

農村

宮本 百合子

「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页

青空文庫

四五年前から、この村と町との間に水道を設ける事の計画が一番池が有るために起って居た。

町方から小半里の間かなりの傾斜を持って此村は高味にあるのでその一番池から水を引くと云う事は比較的費用も少しですみ、容易でも有ろうと云うのでその話はかなりの速力で進んで、男女の土方の「トロッコ」で散々囲りの若草はふみにじられ、池の周囲に堤を築かれ堤の内面はコンクリートでかためられ、外面には芝を植えられて「この池の魚釣る事無用」「みだりに入るべからず」と云う立札が立ち、役人のいる処や、標示板の立ったはもう二年ほど前の事である。

そのために、湖の様に、澄んで広々と、彼方の青や紫の山々の裾までひろがって居る様にはてしなかった池も、にわかに取り澄まして、近づき難い、可愛げのない様子になって仕舞った。

その頃、かなり一番池とは、はなれて、その岸辺は葦でみたされ堤は見えない処で崩れ落ちて、思いもかけぬ処から水田に、はてしなく続いて居る。

この池の堤の裏を町に行く里道の道とも云うべきのが通じて居る。

何の人工も加えられず、有りのまま、なり行きのままにまかせられて居るので、池は、何時とはなし泥が増して今は、随分遠浅になって居る。