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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
私はいつまでもじいっと彼方を見て居た。
彼方も又、私におとらないほど、此方を見つめて居る。けれ共、とうとう二度目の石はそのまま男の子の足元にすてられ、皆家へ入って仕舞った。
それを見すますと急に私は、頭の頂上で動悸がして居る様な気がした。
それからすぐの家の門へ入るまで私は、まるで駈けると同じ様な速さで、何も考えるいとまもなく急いだ。祖母の顔を見るとすぐ、
「甚助の家の児達は、ほんとうに、いやな児だ!
と云ったっきり縁側に腰をかけて仕舞った。口に云われない安心が切り下げの祖母の姿と、さっぱりときれいなあたりの様子から湧き出て私の心に入って行った。
私は何の不幸も知らない、世の中はいつでも親切なつもりの言葉は、親切な様に、情深い話はその様にばかり聞かれるものの様な気がして居る。
又、それが、必してそうばかりではないのも知って居ながら、実際、自分の親切な言葉をああした調子に返され、その上、後から小石まで投げつけられ様とは何だか不思議な様な気がした。
人にねらわれた事のない私、ああやって、形に表われた様な事で小石の的にされた事などのない私はどんなに気味悪く思っただろう。