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のうそん

農村

宮本 百合子

「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页

青空文庫

と云って祖母に返すと、すぐ元の場処に仕舞いに行く。

菊太は、自分の希を叶えてもらった嬉しさに何となく輝いた顔になって、身軽に立って女中に消えた火をなおしてもらったり、茶をつぎなおしたりする。

祖母は気の毒なほどいやな顔をして炉の四辺に艷ぶきんをゆるゆるとかけたり、あっちこっちから来た封筒を二つに割って手拭反古を作ったりして菊太の帰って呉れるのを待って居る。

あきるほど茶をのみ、煙草をふかしてから、

「御暇いたしますべえか、

ほんとに有難うござりました。

来年はきっとなしますかんない。

お鳥もはあ、さぞ喜びますべえて、

お嬢様もはあ、有難うござりやした。

と腰をあげる。腰を塵を取る様にパタパタと叩き三つ四つ頭をさげて土間の女中にまで何か云って庭の入口の竹垣に引っかけて置いた、裾の切れた、ボタンもない黒ラシャの茶色になった外套のお化けの様なものをバアッとはおって素頭でテクテクと歩いて行く。

中高な門内の道を出ると菊太はチョイと振り返って草の両側に生えて居る道を、ポコポコと小さいほこりの煙をたてて帰って行く。

甚助の家の方へ曲る頃、祖母はありったけのくさくさを私に打ちあける。