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のうそん

農村

宮本 百合子

「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页

青空文庫

と云って居るから両方で荒い声なんか出す事は決してなかった。けれ共、どうしても願い通りにしてやればつけ上る気味がある。

どうしたら小作がうまく上り、地主との気持が円く行くかと云う事は、よく考えるけれ共分らない。

一番、小作をさせないのが良いのだろうけれ共、資産のない、他人の田を働いて生活して居る者は、それを取りあげられたら、この上なくひどい目に会う事になるからこまるし、又地主にした処で小作をさせなければ、家に下男を置いて作らせなければならない。それも、借すほどの田を一人では仕限れないから小作をさせるより却って手間と費用がかかるわけになる。

小作男と地主とはどうしてもはなれられないものの様である。何にしろ、一方は取る方で一方は取られる方である。恐らく、年に二度収獲のある土地でも小作男はなろう事なら、一二俵はまけて慾しくて居るだろう。

ほんとに何かうまい事が工夫されないと困ると思う。

(四)

随分と骨に通る様に寒い風が吹く。

家中で一番遅く起きた私は寝間着の上に、黒っぽい赤い裏の「どてら」みたいなものを着て、不精に手を袖の中にしっかりと包んで、台所の炉のわきに女中が湯をわかして呉れるのを待って居た。