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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
寒いのでそちらの様に長起きが出来ないんです。つくづく東京が恋しい。平常私は『自分は、手足は山の中に暮しても頭だけ――私の仕事なり考えなりは大都会の中央で活動して居なければ満足出来ないだろう』と云ってましたが、尚更、私は、そう云う人間である事が明かになって来ました。帰りたい、ほんとうに帰りたい。けれ共、東京で桜が末になるまで、冬の寒さにつかまえられて、雪の積った中に祖母を見す見す残して行く事を考えれば、そうも出来ない。皆気が利かないから私でも居なければ、暖まらない時に湯タンポを入れたり、夜着の肩を打いてあげるのは一人も居ないんですものねえ。
と書いて友達に、家へは、キニイネの丸薬とその処方を送って呉れる様に云ってやる。私はすっかり冬籠りの仕度をするためにその他、毛足袋だの何だのも云ってやった。女中は炬燵の中で、松の枝に下った「つらら」に砂糖をつけてカリリ、カリリとたべて居た。
(六)
雪解で一しお寒さがはげしい。
キラキラしい太陽が面を出したので雪からは少しずつ水蒸気が立って行くのが見える。あたりが何となし、うるおって、ハアッと息を遠くから吹きかけた鏡の面の様な空合になって居る。