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のうそん

農村

宮本 百合子

「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页

青空文庫

今日は誰の家で湯をたてると、あすは、誰の家でたてると順をきめて、湯をたてる番の人の家へもらいに行くのである。家で湯をたてると彼の小学校長の家族を始め、あすこの婆さん、此処の女房と、湯をもらいに来る。自分の番になるのを待って居るものや、もう上ったものは炉の廻りに集って、茶をのみのみ世間話をして居る。血統も分らない――又どんな病気を持ってこうして居るかもしれない人達を、自家の湯へ入れると云う事は随分と危険な事だ。外で行水をつかえなくなってからだけでもたててる。小銭湯の様な特別の湯槽をだれかの家へあずけて、湯のないものは、その家の家族のとは違った湯槽に入る様にしたらいいだろうのにと祖母にも云ったけれ共、湯のたて廻しなどが平常気の置けない交際機関になって居るので、今急にそれをやめれば皆が不自由するし、又、悪く思われるからと云って居た。祖母と私は一番先へ入る事にきめて居るのである。

そんな事をしない東京から来て見ると何だか不安心だ。銭湯を知らない私は、温泉でさえ気味が悪い様でいやがって居るのだもの、新らしくなりもしず、汚れた水を吸い込む木の槽の肌にはどんな汚れが誰から出て入って居るだろうと思うといくら新らしい湯に最初入ってもいやである。