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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
の暮が立って行く。十二月の末、それはこの上なく日の短かい寒い時分なので、正月の買物に町へ出掛けるものさえ少ないのである。
東京の友達からはクリスマスの事等を云ってよこした。ほんとにもうクリスマスも「あさって」になった事だと思うと、今更、正月が近い内になったのに驚く。東京に居ればこそ、小さい兄弟に、贈物をしたり、外からもらったりしてクリスマスを忘れる事はないけれ共、此んな処に来て居るとクリスマスの「ク」の字さえ口に出ないので、私も忘れ気味になって居た。暮を知らない様に静かな此村で、年越しをするのもおだやかで好いだろう等と思う。
町へ雑誌と、書く紙を買いに行こうと思いながら、寒さにめげて一日一日とのばして居たが、歳暮売出しを町の店々は始め、少しは目先が変って居るからと云う事で、芝居ずきの「御ともさん」とお繁婆と女中とで午前の日が上りきって、暖い時に出かけた。
頸巻はいくら毛でも鼻の先がひどくつめたい。祖母は、足袋の先に真綿を入れて呉れたので足はいくらか暖かい。一本筋の高い処にある道を、静かながら北の山からすべり落ちて来る風にあらいざらい吹きさられて、足の遅いお伴と一緒に、私はもうちっと早く歩きたいもんだなあと思いながら歩いて行く。