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のうそん

農村

宮本 百合子

「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页

青空文庫

出すのも出すのも地味なのばっかりなので、私は袂を出して見せて、こんな様なのを見せて呉れと云った。番頭は早口に遠慮なく出させる私を、変な顔をして見た。褪紅色の地に大きな乱菊を出したのと、鶯茶の様な色へ暖い色の細かい模様を入れたのを買うと、あっちの隅でお繁婆さんは、出来上って居る瓦斯の袢天の袖を引っぱって居たので、せかせまいと女中の見て居た袢衿を一緒に見る。赤味のかかったうすい茶色の厚い紬の様な地の袢衿があったので、その模様を太い綿糸で縫いとって本の表紙にするつもりで買って仕舞った。

その店を出た時お繁婆さんの背中の風呂敷は少しふくれて居た。中にはさっきの袢天が入って居るのだ。「おとも婆さん」も何となしゆとりのある顔をして居る。皆、相当に満足しててんでにかなり重いものを持って家へかえったのは午後もかなりになって居た。私と女中は二人とも重いものをさげて居る。村の酒屋からの酢は中が割ってあるので買って来たビール瓶をさげ、砂糖と洗濯シャボンと髪の油と、そんなまとまりのない散り散りになるのを持って居る女中は、絶えず両方の手で仲の悪い互々を巧くまとめなければならず、反物を二三反と本をかなりと菓子の包をもって居る私とは、重い思いをしながら二人の婆さんに別れると、家まで笑いつづけて来た。