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のうそん

農村

宮本 百合子

「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页

青空文庫

鶏を一羽と卵と菜を沢山置いて行った。

裏の竹藪から二本の竹を切り、庭の隅の松の枝を雌、雄二本下して、麻繩のきれいなもので七五三に結びあげ玄関前に立て、水口の柱に枝松が釘で打ちつけられた。皆甚五郎爺の手際である。風呂を振舞われ、地酒によって四斗俵を四俵運べた若い時の力を自慢したりした。祖母は七十より四つ五つ上になった自分の年を数えていろいろの事に出会った思い出を話し、

「もう私の様になってからはもうだめだ。

と云いながら、まだ肩や腰が痛い位で壮健で居る自分の体が嬉しい様に微笑んで居る。非常におだやかに来る人もなく、ぼんやりと大晦日が更けて行くのでいつもよりのびやかに次の年を迎える気持が嬉しい。

(七)

非常に天気が良い。

田畑の面のはてしない広い処に太陽がゆったりと差して、黄金色の細かい細かい粉末が宙に入りみだれて舞って居る様に見えて居る。立木の陰、家の陰などは濃くたちこめた靄そのままの紫っぽい色がただようて、枯木の梢の太陽が四方に放散する。紅の輝きの流れが見られる様である。

雪降りの日の様に見えるかぎりは真白で散り敷いた落葉の裏表からは絹針より細く鋭い霜の針がすき間もなく立って居る。