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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
と帰って行く。耳のそばで十の金だらいを一時にたたかれた様なガーンとした気持で帰って行くのである。そうしてする土産話は、にぎやかな派手な自動車の事や、三越で何百円とする帯を買って居た奥様の話ばかりである。
雑誌は雑誌で、一文なしで上京して大臣の椅子を占めた人の話や、苦学して博士になった人の話やが山ほどある。若い者の奮発心を起すにはこの上ない事ではあるが、一文なしで上京して大臣になった人などは、大抵維新の時にそのきわどい運命の瀬に立った人ばかりである。義務教育をすましたばかりの若者の頭には時代と云う考えがない。すっかり秩序的になった今の世の中を維新当時とごたまぜにして居る。そして、自分も大望を抱いて東京へ飛出しは飛出しても、半年位後にはやせてしおしおと帰って来るか、帰るにも帰れない仕儀になったものは諸々方々に就職口をさがしあぐんだ末、故郷の人に会わされない様なみじめな仕事でも、生きるためにしなければならなくなる。
東京を一寸も見た事のないものに東京を紹介する雑誌は、責任をもって着実な考えで東京を知らせ、良い処よりも悪い裏面を多く知らせた方がまだ不難だろうとさえ思われる。