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きんせいかいじんでん
近世快人伝
夢野 久作
「新青年」1935(昭和10)年4月号~10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 79,469 字 · 157 页
……ように見えるが、その実、御自身ではドウ思って御座るかわからない。ただ相も変らぬ芸無し猿、天才的な平凡児として持って生まれた天性を、あたり憚らず発揮しつくしながら悠々たる好々爺として、今日まで生き残って御座る。老幼賢愚の隔意なく胸襟を開いて平々凡々に茶を啜り、談笑して御座る。そこが筆者の眼に古今無双の奇人兼、快人と見えたのだから仕方がない。世間の所謂快人傑士が、その足下にも寄り付けない奇行快動ぶりに、測り知られぬ平々凡々な先生の、人間性の偉大さを感じて、この八十幾歳の好々爺が心から好きになってしまったのだから致し方がない。そうして是非とも現代のハイカラ諸君に、このお爺さんを紹介して、諸君の神経衰弱を一挙に吹飛ばしてみたくなったのだから止むを得ない。
元来、頭山先生が、この新青年に、きょうが日まで顔を出さないのが間違っている。それも頭山先生が時代遅れのせいではない。却って新青年誌の方が頭山老人の思想よりも立ち遅れている事を筆者は確信しているのだから是非もない。ここに先生の許しを得て、逸話を御披露する。
頭山満翁の逸話といったら恐らく、浜の真砂の数限りもあるまい。