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こんどういさみとかがく

近藤勇と科学

直木 三十五

「文藝春秋増刊・オール讀物号」1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,465 字 · 28 页

青空文庫

竜作が立上った。

「退却?」

金千代が竜作の顔を見て、立上ろうとすると、近藤が走ってきた。

「退却ですか」

金千代が突立った。近藤が、頷いて金千代の顔をみると額から血が噴出して、たらたらと、頬から、唇へかかった。金千代は

「ああ――当った――やられた」

と、呟いて、眼を閉じた。竜作が

「やられた、弾丸に当った」

近藤は、自分の撃たれた時には、判らなかったが、すぐ眼の前で、他人の撃たれるのを見ると、すぐ

(準備を仕直して、もう一戦だ。このままでは戦えぬ)

と思った。口惜しさと、焦燥と、憤怒とで眼は輝いていたが

「土方っ、退却っ」

と、怒鳴って、手を振った。刀をさしているのが、馬鹿馬鹿しいようだった。二三十年無駄にしたような気になった。土方の方が俺より利口だと思った。

一寸振向くと、敵は、未だ、隠れたままで射撃していた。そして空に耳許に、頭上に、弾丸の唸りが響いていて、立木へ、土地へ、砂嚢へ、ぶすっぶすっと時々弾丸が当った。

(こんな物で、死ぬ?――そんな)

と、思って金千代を見ると、口を開けて、両手をだらりと、友人の膝の両側へ垂れていた。

「捨てておけ、馬鹿っ」