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こんどういさみとかがく

近藤勇と科学

直木 三十五

「文藝春秋増刊・オール讀物号」1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,465 字 · 28 页

青空文庫

堤の上を川沿いに、よろよろと、黒くつながり乍ら、下級の兵が落ちて行っていた。

「除けっ」

「新撰組だっ」

人々は、喧騒の渦巻いている中を、堤から降りた。支配方らしいのが

「舟か」

「八十人」

「大伝馬二艘」

人々は、後から来た新撰組が、優待されるのを羨ましそうに、黙ってみていた。小舟から伝馬へ乗りうつると

「未だ入れる。おい、そこの」

と、支配方が、手招きした。旗本らしいのが、五六人、蒼い顔をして、御叩頭しながら走ってきた。

「御免下さい」

「狭くて退屈ですが」

土方に御叩頭をした。

「船頭っ、早く出せ」

土方が怒鳴った。

一人が鎧を脱いで

「こんな物っ」

と、叫んで、川の中へ投げ込んだ。誰も、頭髪を乱して、蒼白な、土まみれの顔で、眼を血走らせていた。

「いかがに成りましょうか」

旗本の一人が聞いた。

「判らん」

一人は、川水で、顔を洗った。疵所を手当しかける者や

「食べ物」

と云って

「水でもくらえ」

と云われる者や――一人が又、鎧を脱ぎすてて、川の中へ投げ込んだ。二三人が、船頭に合せて、槍を、揖の代りにして、舟を押出していた。旗本は、一固まりになって、小さく、無言で俯いていた。