轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ついおく

追憶

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,363 字 · 35 页

青空文庫

けれ共此頃になっては、何かにつけて思い出す三十二三の彼と私との間に織られた記憶の断片が種々な点で私にとっては忘れ難いものになって来た。

其の原因が何であるか私は分らない。

又分らせ様とも仕ないけれ共、漸う育ち掛けて来た感情の最大限の愛情を持って対した私と、宗教的に馴練されたどちらかと云えば重苦しい厳粛な愛情を注いで居た彼との間に行き交うて居た気持は、極く単純ではあったにしろ他の何人の手出しも許されない純なものであった事を思い出す。

私は両親に対してより以上の愛を彼に捧げて居た。

彼の死の二三日前まで一刻も私は離れて居た事がなかった。

彼の影の様に暮して居た私は今になって暫くの間弱められて居た彼へ対しての愛情がより種々の輝きを添えて燃え出して来た事を感じて居るのである。

誰でも多くの人はその幼年時代の或る一つの出来事に対して自分の持った単純な幼い愛情を年の立つままに世の多くの出来事に遭遇する毎に思い浮べて見ると、真に一色なものでは有りながら久遠の愛と呼び度い様ななつかしい慰められる愛を感じる事が必ず一つは有るであろう事を信じる。

彼はその私の久遠の愛の焦点であった事を断言する事が出来るのである。