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ついおく

追憶

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,363 字 · 35 页

青空文庫

彼は非常に興奮した口調で殆ど叱責する様に私には分らない種々の事を説き聞かせた。

そして終には、教会の説教台に立って、幾百かの聴衆を前にして居ると同様に、手を動かし眉をあげて、いよいよ声高に云うのを見て居ると、私は何よりも先ず激しい恐怖に捕われて仕舞った。

生れて始めて斯う云う処に来た事丈でさえ異った気持にされて居たのに、叔父の様子と声は七つの子供に対しては余り厳格であり解し得ないものであったので、今にも先ぐ逃げ出したい気持になって居た。

けれ共逃げ様にも行く道は分らなかった。

私は途方にくれて、きっと気が急に違ったに相違ない叔父の素振りをおずおずながめて居たが到頭堪え切れなくなって、

「帰りましょうよ、

ね叔父ちゃん、

帰りましょうってば。

とせがみ出した。

必死の力を出して骨の出た彼の肩をゆすったり、手を引っぱったりして、漸々彼を立ち上らせたのは、余程立ってからの事であった。そして行きより非常に長くかかって家に帰り着いた。此の忘られない事のあった※(「涯のつくり」、第3水準1-14-82)は何処の所か私には長い事分らないで居たので、或時は其等の事は皆自分の空想なのでは有るまいかと云う気持にさえ成った事があるが、いつだったか目黒へ行く時田端へ出る近路だと連れて行かれた処は、丁度私の記憶の中の彼の野原であった