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たいほしゅぎしゃ
退歩主義者
「月刊読売 夏期臨時増刊号」1949(昭和24)年7月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,703 字 · 20 页
だから、また、下らなきゃいけない。狸劇団へ身をやつす。退歩主義、必死の思いですよ。たのみます」
「ふざけるない」
「ふざけちゃいないよ。なんでも、やるからね。役者でも、道具方でも、ハヤシ方でも、選り好みはしないよ。あんなもの、ちょッと稽古すりゃ出来るだろう。なんなら、あなたの書生でもいゝよ。メシを食わして寝かしてくれりゃ、なんでも、やらア。この小屋の火の番やろうか。ちゃんとフトン持ってきたから、舞台のマンナカへ寝かしてくれりゃ、なんでもないじゃないか」
「ふうん」
といって品川一平はソッポを向いたが、彼は心眼によって、馬吉の非凡なところを見抜いたのである。よほどのバカでなければ出来ないショーバイというものがあるものだ。然し、バカはメッタにいないものなのである。一平は女房に逃げられて、雑事に不自由していたので、とりあえず下男代りにコキ使うことにした。が、さすがの彼の心眼も、馬吉の胃袋を見破ることができなかったのは是非もない。
★
万事退歩主義ですんでしまえば良かったのだが、ちょッとばかり良い思いをしたのが馬吉の身に悪るかった。
彼は一度役者にでて、すこしだけ、うけたのである。