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とじょうのはんにん
途上の犯人
浜尾 四郎
「犯罪科学」1930(昭和5)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,477 字 · 38 页
苦しい数日数夜を通らなければならなかったのです。はじめは、余り私が嫉妬深いので、わざと妻が私にからかって居るのではないか、と思いました。いや、むしろそうであってほしいと願ったのです。自白する妻の前で私は歎願しました。どうか今まで云った事は嘘だと云ってくれと! しかし、妻の告白は全く間違いはなかったのです。ただ敏子は、過去の罪はあくまで自分でわびるが、将来は決して左様な事はしない、否、将来ばかりではない、結婚後だって無論そんな事はない。只あれは結婚前の過失だから、どうか許してくれと申すのです。先生、こう云われてはどうすればいいのです。未練な私は敏子をまだ愛して居るのです。妻の涙を許すより他仕方がなかったのです。
その頃妻は妊娠して居ました。私は妻の告白後、その腹の児を疑ったのです。しかし、これに対して、妻は断固として私の疑いの根拠のない事を主張しました。妻とこの話をする度に、私はそれをきかされました。きかされては、心で安心したのです。しまいには疑いが心に食い入って来ると、わざと妻になじり、妻が断固として私の疑いを破壊してくれるのを頼りにしていたような男らしくないひねくれた私になってしまいました。