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とじょうのはんにん
途上の犯人
浜尾 四郎
「犯罪科学」1930(昭和5)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,477 字 · 38 页
妻の涙の中に、ひろ子はついに息を引き取りました。死亡診断書には急性肺炎と書いてあったと思います。誰も怪しむ者はありません。ささやかな葬儀を以てこの事件は終ったのです。
先生、私はこうやって完全に殺人を行いました。しかもこの世の中に、一人だって私を疑っているものはありません。私はあなたからおそわった通りに行いました。人を殺した! しかし罰せられぬ! です」
相川俊夫と自称する男は、こう云ってにやにやと薄気味わるい笑いを洩らした。私は彼の話をきいて居るうちにその中に、或る真実さを認めた。しかし同時に余りに凡てが巧妙すぎることも感じた。もし彼がいう通りの犯人とすれば、実に容易ならぬ事件である。
私は、今まで、彼が娘を殺したような殺人方法をどの小説でも書いた事はない。彼自身も又自ら、直接のヒントは流行性感冒から得たと称している。けれど彼のいう所に従えば、その遠因は私のつまらぬ小説にあるらしい。
私は、彼の話の真実性と、正気の程度を試みる為に、強いて冷静を装ってこうきいて見た。
「成程、恐ろしい話だ。君の話は物凄い。君が自ら犯罪を語る以上、僕は疑う事はこの際避けよう。