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じんるいのせいぞんきょうそう

進化と人生(上)

丘 浅次郎

丘浅次郎『進化と人生(上)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:人類の生存競争、教育と迷信、誤解せられたる生物学、人道の正体、生物学的の見方、生物学より見たる教育、戦争と平和、動物界における善と悪、脳髄の進化、民族の発展と理科、理想的団体生活。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,343 字 · 164 页

青空文庫

さらに考えねばならぬのは、神経系の働きは意識に現われた知、情、意の作用のほかにもなお存することである。刺激に応じて、ただちに無意識的に働く反射運動のことは前に述べたが、動物には別に本能という働きがあって、あたかも知力によって考え出したかと思われるごとき手段を用いて、目的を知らずに目的にかのうた働きをする。たとえば蝶類がその幼虫の餌となる植物の葉に卵を産みつけ、蚕が蛹となる前にまず繭を造ってそのうちに隠れるごときはすなわち本能の働きであるが、これらは一生涯にただ一回よりせぬことゆえ、前もって稽古するわけでもなく、他を見習うて真似するのでもない。生まれながらにして、かくなさずにはおられぬ性質を備えておるのである。下等動物を調べてみると、本能の働きには驚くべきものがはなはだしく多くあり、中には実に不思議に堪えぬものもあるが、知力の進んだ動物では本能は漸々少なくなり、知力の最も発達した人間にいたれば、本能はただわずかに生まれてただちに乳を求めて吸うことと、一定の年ごろになると異性を求めて相接せずにはおられぬこととの二つだけにとどまる。この二つはたれが教えずとも、たれに習わずとも生まれながらになし得ることで、かつなさずには我慢ができぬ。