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じんるいのせいぞんきょうそう

進化と人生(上)

丘 浅次郎

丘浅次郎『進化と人生(上)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:人類の生存競争、教育と迷信、誤解せられたる生物学、人道の正体、生物学的の見方、生物学より見たる教育、戦争と平和、動物界における善と悪、脳髄の進化、民族の発展と理科、理想的団体生活。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 82,343 字 · 164 页

青空文庫

もっとも人間の知識は次第に進歩するものゆえ、今日真理と見なされることが、将来には迷信と名づけられる時がくるやもしれぬ。歴史を見れば、多くの「真理」なるものは初め異端の説として現われ、暫時もっぱら行なわれたるのち、ついには迷信として葬られるのが定例のごとくであるから、今日の真理もあるいは一時的の真理かもしれぬが、これはやむをえない。われらは時代相当の知識を標準として、迷信とみなすべきものを迷信として論ずるよりほかに途はないのである。さて今日わが国の状態を見ると、迷信とみなすべきものの行なわれていることはきわめて多い。これがすなわちわが国に理科的精神の普及せぬ証拠で、これを見ても理科教育をいっそう盛んにせねばならぬことが知れる。数日前のある新聞に、ある地方の寺で和尚と小僧とが喧嘩をして、小僧は鬱憤のあまり刀をもって寺の本尊なる木製の仏像を切ったところが、仏像の眼に涙が出たとの噂が広まって、そのため日々数千人の参詣者があって、寺は大繁昌であるとの記事があったが、かようなことを信ずるに適した脳髄を有する人がわが国にはまだなかなか多い。先年鶴見近在のお穴様の繁昌したときには、参詣人を相手にする永久的建築の店家が五百軒もできて、線香の煙りがはるかにへだたったところからもよく見えた。