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とんそう
遁走
葛西 善蔵
「新小説」1918(大正7)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,581 字 · 23 页
――彼は今、哀しき道伴れという題で、私のことを書いているそうだから。
彼の今度の長編は、彼の親しい六七人の友人たちをモデルにしたものだ。そしてかなり辛辣に描かれている。しかもそうした友人たちが主催となって、彼の成功した労作のために祝意を表そうというのだ。作者としては非常な名誉なわけだ。
午後、土井は袴羽織の出席の支度で、私の下宿へ寄った。私は昨晩から笹川のいわゆるしっぺ返しという苦い味で満腹して、ほとんど堪えがたい気持であった。「しかし笹川もこうしたしっぺ返しというもので、それがどんな無能な人間であったとしても、そのために亡びるだろうというような考え方は、僕は笹川のために取らない」と、私は笹川への憤慨を土井に言わずにはいられなかった。
「しかしまあそう憤慨したところで、しかたがないよ。とにかく僕はこれから会場へ行ってみて、誰か来てるだろうから様子を聞いた上で、僕も出席するしないを決めるつもりだから。そして僕も出席するようだったら、君を迎えに来るから、
「いやとにかく僕は出席したくないから、そうしないでくれたまえ」と、私は言った。
土井の出て行った後で、私は下宿のまずい晩飯の箸を取った。