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とんそう

遁走

葛西 善蔵

「新小説」1918(大正7)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,581 字 · 23 页

青空文庫

佐々木は心から怒ってしまったのだ。彼は顔を真赤にして、テーブルの上にのしかかるように突立って、拳固を振廻さないばかしの調子で、呶鳴りだしたのだ。私たちはふたたび椅子に腰をおろし始めた。そして偶然のように、笹川一人が、テーブルの向う側に置かれていた。

「いや、そう言われると、僕は何かひどい……」笹川も顔を真赤にして、皆なの顔を見ないようにして、こう呟くように言った。

「いや、君がどこまでもそう白ばくれるつもりなら僕も言うが、じつは僕は今朝K社の人へ僕はそんな訳なら出席しないと言ったのだ。すると、いやそれでは困る、それであなたの方でそう怒るなら私の方でも申しあげますが、いったい今度の会をやるということと、倉富さんが評論を書くということは、最初から笹川さんの出版条件になっております……と言うんじゃないか、それでもまだ君は……」

「いや、それは違う……それならばいっしょにK社へ行って訊いてみてもいい……」笹川はテーブルと暗い窓の間を静かに歩きながら、やはり呟くように言った。

「何という君は、恐ろしい人だ! 僕はこんなことまで言いたくないと思うが、君があまり意固地だから言うが、君がこの前短編集を出す時も、K社へ行って僕も出したがっているからと言ったそうじゃないか。