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とんそう
遁走
葛西 善蔵
「新小説」1918(大正7)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,581 字 · 23 页
私は衰えきった顔して、毎日下宿の二階から、隣りの墓場を眺めて暮していたのだ。笹川は同情して、私に金を貸してくれた。その上に彼は、書きさえすれば原稿を買ってやるという雑誌まで見つけてきてくれた。こうして彼は私を鞭撻してくれたのだ。そして今また今度の会へもぜひ私を出席さして、その席上でいろいろな雑誌や新聞の関係者に紹介してくれて、生活の便宜を計ってやると言っていたのだ。
彼はほとんど隔日には私を訪ねてきてくれた。そしていつも「書けたかね?……書けない?……書けないなら書かないなんて……だから君はお殿様だというんだよ!」こういった調子で、鞭撻を続けてくれたのだ。しかし何という情けないことだろう! 私は何が、自分をこんなにまで弱らしてしまったのかを、考えることができない。愚か者の妻の――愚痴ばかし言ってくる――それほどならば帰る気になぞならなければよかったのに――彼女からの時々の手紙も、実際私を弱らすものだ。けれどもむろん、そのためばかしとはいえない。とにかく私には元気がない。動くものがない。私の生命力といったようなものが、涸渇してしまったのであろうか? 私は他人の印象から、どうかするとその人の持ってる生命力とか霊魂とかいったものの輪郭を、私の気持の上に描くことができるような気のされる場合があるが、それが私自身