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うんめいろんしゃ

運命論者

国木田 独歩

「山比古 第十號」1903(明治36)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,357 字 · 34 页

青空文庫

けれども僕の其黒点の真相を捉え得たのはずっと後のことです。僕は気にかかりながらも、これを父に問い返すことは出来ず、又母には猶更ら出来ず、小な心を痛めながらも月日を送って居ました。そして十五の歳に中学校の寄宿舎に入れられましたが、其前に一ツお話して置く事があるのです。

大塚の隣屋敷に広い桑畑があって其横に板葺の小な家がある、それに老人夫婦と其ころ十六七になる娘が住で居ました。以前は立派な士族で、桑園は則ち其屋敷跡だそうです。此老人が僕の仲善でしたが、或日僕に囲碁の遊戯を教えて呉れました。二三日経て夜食の時、このことを父母に話しました処、何時も遊戯のことは余り気にしない父が眼に角を立て叱り、母すら驚いた眼を張って僕の顔を見つめました。そして父母が顔を見合わした時の様子の尋常でなかったので、僕は甚だ妙に感じました。

何故僕が囲碁を敵としなければならぬか、それも後に解りましたが、其が解った時こそ、僕が全く運命の鬼に圧倒せられ、僕が今の苦悩を甞め尽す初で御座いました。

四

僕の十六の時、父は東京に転任したので大塚一家は父と共に移転しましたが、僕だけは岡山中学校の寄宿舎に残されました。