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うんめいろんしゃ
運命論者
国木田 独歩
「山比古 第十號」1903(明治36)年3月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,357 字 · 34 页
彼はやゝ暫く顔を上なかった。けれども十分とは自分を待さなかった、彼の起あがるや病人の如く、何となく力なげであったが、起ったと思うと其儘くるりと後向になって、砂山の崕に面と向き、右の手で其麓を掘りはじめた。
取り出した物は大きな罎、彼は袂からハンケチを出して罎の砂を払い、更に小な洋盃様のものを出して、罎の栓を抜や、一盃一盃、三四杯続けさまに飲んだが、罎を静かに下に置き、手に杯を持たまゝ、昂然と頭をあげて大空を眺めて居た。
そして又一杯飲んだ。そして端なく眼を自分の方へ転じたと思うと、洋杯を手にしたまゝ自分の方へ大股で歩いて来る、其歩武の気力ある様は以前の様子と全然違うて居た。
自分は驚いて逃げ出そうかと思った。然し直ぐ思い返して其まゝ横になって居ると、彼は間もなく自分の傍まで来て、怪げな笑味を浮べながら
「貴様は僕が今何を為たか見て居たでしょう?」
と言った声は少し嗄れて居た。
「見て居ました。」と自分は判然答えた。
「貴様は他人の秘密を覗がって可いと思いますか。」と彼は益怪げな笑味を深くする。
「可いとは思いません。」
「それなら何故僕の秘密を覗いました。