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うんめいろんしゃ

運命論者

国木田 独歩

「山比古 第十號」1903(明治36)年3月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,357 字 · 34 页

青空文庫

」と言って苦しそうな嘆息を洩し、冷かな、嘲るような語気で、

「けれども、実は其方が幸福なのです。僕の言葉で言えば貴様は運命に祝福されて居る方、貴様の言葉で言えば僕は不幸な結果を身に受けて居る男です。」

「それでは此で失礼します。」と自分は起上った、すると彼は狼狽て自分を引止め、「ま、ま、貴様怒ったのですか。若し僕の言った事がお気に触ったら御勘弁を願います。つい其の自分で勝手に苦んで勝手に色々なことを、馬鹿な訳にも立たん事を考がえて居るもんですから、つい見境もなく饒舌のです。否、誰にも斯んなことを言った事はないのです。けれども何んだか貴様には言って見とう感じましたから遠慮もなく勝手な熱を吹いたので、貴様には笑われるかも知れませんが。僕にはやはり怪しの運命が僕と貴様を引着たように感ぜられるのです。不幸せな男と思って、もすこしお話し下さいませんか、もすこし……」

「けれども別にお話しするようなことも僕には有りませんが……」

「そう言わないで何卒もすこし此処に居て下さいな、もすこし……。噫! 如何して斯う僕は無理ばかり言うのでしょう! 酔たのでしょうか。運命です、運命です、可う御座います、貴様にお話がないなら僕が話します。