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みちづれ

道づれ

宮本 百合子

「文芸」1937(昭和12)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,491 字 · 41 页

青空文庫

はる子も、それ以上説明を求めようともしない。重吉が自然木の腰かけから立ち上ってのびをしながら、そこに並んでかけている宏子とはる子のどっちへともつかず、

「まあ悠々とやるんだね」

そう云って、信じるところありげな眼の中に輝く笑を浮べた。

「一生のことだろう? いそがずといいさ。必要なら、どういう仕事でもやるという確信で、今の場所で最善をつくしていればいい。そうだろう?」

云いながら、重吉は自分の胸に迫って来る感動を覚えた。彼自身への未来は果してどのように展開されて来るであろう。彼が、高校時代から自身の才能についても活動についても、期するところあって自重している。その精華はいつどのような形で、新しい歴史の裡に活きるであろうか。それは彼の前にもまだ示されていない。

「すこし歩こうか」

三人は、それぞれの感動でしばらく黙って、かたい芽のふくらみ出した樹の間から、青空の見える小道を歩いて行った。ぽつぽつ話し出して、重吉が、

「この頃、みんなどんな本よんでいるかい」

ときいた。

「多喜二のものやなんかよむかい?」

「読んでいるけど、感想きくと、大抵素敵だと思うって云う程度なんです」