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「どうひょう」をかきおえて

「道標」を書き終えて

宮本 百合子

「新日本文学」1951(昭和26)年3月号、「展望」1951(昭和26)年3月号(同時掲載)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,167 字 · 14 页

青空文庫

如是閑の批評がそのように反駁されたことは正しかったけれども、それならばプロレタリア文学は、その作品の現実で、どこまで日本の独特な家族制度――思想問題では天皇制権力と直結する家族制度とそれによって苦しむ進歩的人間のたたかいを描き出したと云えるだろうか。日本の半封建的義理人情は、どのように歴史のなかで、より人間性の積極な表現に向って揚棄されつつあるか、その現実の過程――「新しい人間」の成長のあとづけは、日本の歴史に典型的な絶対主義と軍国主義への人間的抗議を通じてこれもやはり社会主義リアリズムの課題である。

一九三三年に小林多喜二の「党生活者」がかかれて、新しい人間のある像がうちたてられたが、感情の問題などについては、未だ十分追究されつくしていな{い}部分があった。片岡鉄兵の「愛情の問題」における誤りはただされていず、野上彌生子の「真知子」の中のマルクシスト学生の婦人への態度は、あれがよくない面での代表者であることさえ明瞭にされていない。佐多いね子の「くれない」でさえも、語りのこされている部分、或は、作者の現実への譲歩が感じとれる。わたしたちには、人間性の拡大と高まりの問題として、より人間らしい人間関係へすすみゆく一つの道としての恋愛・結婚・家庭の課題がある。