轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

せんきょさつじんじけん

選挙殺人事件

坂口 安吾

「小説新潮 第七巻第八号」1953(昭和28)年6月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,782 字 · 28 页

青空文庫

三高のトラックは赤線区域へはいって行った。パンパン街の十字路で演説をぶちはじめたのである。「シメタ!」寒吉の胸は躍った。

パンパン相手に演説ぶつとはおよそムダな骨折じゃないか。だいたいパンパンというものは移動がはげしいし、転出証明もない者が多く、たいがい選挙権を持たない連中だ。選挙権があったにしても、わざわざ投票にくる筈はないじゃないか。もし投票にくるとすれば、だいたい顔役のいる土地だから、票の行方は一括してきまっていると見なければならない。その顔役にツナガリのない者がここで演説したってムダなことだ。いかに選挙に素人でも、それぐらいのことは分るはずだ。

「なぜ、ここで演説をぶつか」

その理由がなければならぬ。寒吉は車を隠して近寄り、様子をうかがった。

三高は例の如くまず四方を拝んで、再軍備反対論から説きはじめている。赤線区域のオトクイ先の尤なるものはアチラの兵隊サンと近ごろの相場はきまっている。戦争あってのパンパン稼業に再軍備反対をぶッても仕様がなかろう。そのせいでもあるまいが、誰も聞いている者がない。したがって何かがあれば一目で分る状態だが、別に何もない。