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いこん

遺恨

坂口 安吾

「娯楽世界 第二巻第五号」銀五書房、1948(昭和23)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,706 字 · 22 页

青空文庫

配給では足りないと云って彼らは大見栄をきるけれども、物が有りあまっていても買う金がなく、その金を得るために働きたくとも働く口がなかったなどゝいう時代について省みるところがない。

昔はヤミ屋という言葉はなかった。米を買いだしてきて裏口を廻ったところで、誰も鼻をひっかけない。失業者、貧民は巷にゴロゴロしていたが、貧民を救え、失業者に職を与えよ、そんな当り前のことを云っても豚箱にブチこまれる有様であった。

インフレというものは、むしろ痴呆的に、暮らしやすい時代である。その痴呆的な時代にすむ大学生は、身は学究の徒でありながら時代の痴呆性をさとらず、現実に安住して、王者の如くに横行カッポし、太平楽で、身の程を知らない。

先生とかゝわりのある文科の学生は特別太平楽なのかも知れないが、常にタバコのケムリを絶やさず、ダンスをやり、泥酔し、学問は怠け、学業はそっちのけに怪しげな学生劇を興行して、酒手を稼いでいる。

そのことに就いて学生どもに訓戒の一席を弁じると、

「先生、ひがんでますね。先生も、ちょいともうけりゃ、いゝんじゃないかな」

と、ニヤニヤする。あげくに、なれなれしく先生の自宅を訪問して、