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なす、おぜ、あかぎ、しがこうげん

那須、尾瀬、赤城、志賀高原

木暮 理太郎

「改造」1935(昭和10)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,615 字 · 14 页

青空文庫

勿論湿原の中にも沼があり、沼の畔にも湿原はある。しかし地勢上から見てこの区別は明瞭である。

尾瀬沼は海抜千六百六十五米、日光の中禅寺湖よりも四百米近く高いが大さは約五分の一で、深さは三十分の一に過ぎない六米弱である。外にも小沼、治右衛門池などの小池があり、沿岸には孰れも小湿原が発達している。殊に尾瀬沼の北岸にはそれが多い。中にも大江川に沿うたものが最も広く、次第に隆起して、エゾ松、唐檜などの侵入した焼山峠の南に続く高原に移り行くのである。此等の湿地には晩春雪解の跡に無数の水芭蕉の花が葉に先んじて、簇々と白苞を抽き出し、殆ど地を掩うの奇観を呈する。

針葉樹の大深林が見られるのも、主として沼の北岸で、大白檜、黒檜、米栂、姫小松、唐松などが、或は混生し、或は純林をなして鬱蒼と繁茂している。其間に目を惹く闊葉樹の白い樹幹は、草紙樺と白樺とである。沼の南岸の汀線に沿うては、白樺の若木が多く、十月初旬には黄葉が美しい。

燧岳は尾瀬に君臨する女王であると共に、また尾瀬の生みの母でもある。若し此山の噴出がなかったならば、尾瀬沼も尾瀬ヶ原も出現することなく、この勝地も恐らく名もない谷間の窪地たるに過ぎなかったであろう。