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じゃしゅうもん

邪宗門

芥川 竜之介

「東京日日新聞」1918(大正7)年10~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,184 字 · 79 页

青空文庫

た。でございますから、北の方を始め、私どもまで心を痛めて、御屋形の門々に陰陽師の護符を貼りましたし、有験の法師たちを御召しになって、種々の御祈祷を御上げになりましたが、これも誠に遁れ難い定業ででもございましたろう。

ある日――それも雪もよいの、底冷がする日の事でございましたが、今出川の大納言様の御屋形から、御帰りになる御車の中で、急に大熱が御発しになり、御帰館遊ばした時分には、もうただ「あた、あた」と仰有るばかり、あまつさえ御身のうちは、一面に気味悪く紫立って、御褥の白綾も焦げるかと思う御気色になりました。元よりその時も御枕もとには、法師、医師、陰陽師などが、皆それぞれに肝胆を砕いて、必死の力を尽しましたが、御熱は益烈しくなって、やがて御床の上まで転び出ていらっしゃると、たちまち別人のような嗄れた御声で、「あおう、身のうちに火がついたわ。この煙りは如何致した。」と、狂おしく御吼りになったまま、僅三時ばかりの間に、何とも申し上げる語もない、無残な御最期でございます。その時の悲しさ、恐ろしさ、勿体なさ――今になって考えましても、蔀に迷っている、護摩の煙と、右往左往に泣き惑っている女房たちの袴の紅とが、あの茫然とした験者や術師たちの姿と一しょに、ありありと眼に浮かんで、かいつまんだ御話を致すのさえ、涙が先に立っ